遺言を書くことのメリット

遺言を書くことのメリットは次のとおりです。

  • 争族を未然に防ぐことができる
  • 争族を完全にゼロにできないまでも、遺言を残した方が争いを小さくできる
  • 自分亡き後の方針を家族に示すことができる
  • 子ども同士が遺産分割協議で感情的に話し合うよりも、親の方針(遺言)が残っていれば、まだ納得のいく可能性がある
  • 子どもたちの仲が良くない場合、そもそも遺産分割協議が行われないこともある。遺言があれば、遺産分割協議は不要。相続人は遺言に書かれた内容を単独で実行すればよい。
  • 遺産分割協議だと後継者が他の相続人に印鑑押印を「お願いしなければいけない」立場になる。遺言があれば、「遺言に書かれた内容を単独で実行すればよい」立場になることができる。
  • 遺された妻と亡くなった夫の兄弟姉妹が相続人の場合、妻が兄弟姉妹と交渉(遺産分割協議)をしなければならなくなる。遺言で妻に相続させることにしておけば、妻は「遺言に書かれた内容を単独で実行すればよい」立場になることができる。
  • もし遺産分割協議がまとまらず調停や審判に発展した場合、相続人たちの負う金銭的負担、時間的負担や労力、精神的負担は大きなものになる。遺言があれば、それを回避できる。
  • 精神的な面では、安心できる。遺言を書こうか迷っていたお客様が、遺言を書いた後は「すっきりした」「気持ちの整理ができた」というご意見が多いです。

遺言の種類

自筆証書遺言と公正証書遺言が特によく利用されています。

自筆証書遺言とは、自分ひとりで自筆で書く遺言書のことです。

公正証書遺言とは、公証役場というところで公証人に作成してもらう遺言書のことです。

自筆証書遺言と公正証書遺言。以下に、それぞれご説明させていただきます。

自筆証書遺言の注意点とメリット・デメリット

自筆証書遺言の注意点は次のとおりです。

まず、「全て自分で書く」ことです。代筆は不可です。また、パソコン、ワープロ、録音、録画も不可です。

次に、遺言書が完成した日付を記入します。平成〇年〇月〇日と記入して下さい。平成〇年〇月吉日は不可です。

そして、遺言書を作成した方が署名捺印をします。捺印は認印でもよいのですが、証明力を高めるために実印で捺印して印鑑証明書もつけておいた方がより良いでしょう。

実務的な注意点はまだありますが、以上をまとめますと自筆証書遺言は

  • 全て自分で書くこと
  • 日付
  • 署名
  • 捺印

の4点が必要です。

➀~④のうちひとつでも欠ければ、遺言そのものが無効になります(民法第968条第1項)。

自筆証書遺言のメリットは次のとおりです。

自筆証書遺言のメリット

  • 誰に関与されることなく自分ひとりで手軽に書くことができる
  • 公正証書遺言と違い、公証人への手数料がかからない。また、司法書士のような専門家からアドバイスを受けない場合は、専門家への費用もかからない。

自筆証書遺言のデメリットです。

自筆証書遺言のデメリット

  • 司法書士のような専門家からアドバイスを受けずに作成した場合、遺言書の法律的な要件不備のため、遺言書そのものが無効になる場合がある。
  • 遺言者が亡くなった後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要。検認が終わるまでは財産の名義変更ができないため、日時がかかる。また、検認のときには家庭裁判所に相続人一同の出席が必要なため、書かれている内容によっては相続人同士で気まずくなることもある。
     参考:家庭裁判所の検認手続きのページへ
    ※なお、自筆証書遺言の法務局保管制度を利用した場合は家庭裁判所の検認手続きは不要です
  • 遺言が発見されない可能性がある(なお、自筆証書遺言の法務局保管制度を利用した場合はこのデメリットはないです)
  • 変造・偽造や盗難、紛失のおそれがある(なお、自筆証書遺言の法務局保管制度を利用した場合はこのデメリットはないです)
  • 本当に本人が書いたものなのか、遺言者が亡くなった後に争いが起きる可能性がある

公正証書遺言がおすすめです

公正証書遺言とは、公証役場というところで公証人に作成してもらう遺言書のことです。

最も確実に遺言の内容を実現できます。

ですので、専門家としては自筆証書遺言より公正証書遺言をお勧めしております。

公正証書遺言のメリットです。

公正証書遺言のメリット

  • 司法書士等専門家及び公証人が作成するため、法律的な要件不備で遺言書が無効になることはほぼない
  • 家庭裁判所の「検認」という手続きが不要(自筆証書遺言を法務局に保管した場合も不要)。自筆証書遺言と違い、すぐに遺言の内容を実現できる。
  • 変造・偽造や盗難、紛失のおそれがない。公正証書遺言の「原本」が公証役場で保管されるので(「正本」「謄本」が遺言者側に交付されます)。

公正証書遺言のデメリットです。

公正証書遺言のデメリット

  • 司法書士等専門家の報酬と公証人に支払う手数料が必要

以上をまとめますと、公正証書遺言はお金を払う必要がありますが、最も確実に遺言の内容を実現できます。

逆に自筆証書遺言はお金を払う必要はありませんが、遺言の内容が実現されない可能性があるというリスクがあります。また、検認手続きが必要ですので、遺言の内容を実現するまでに日時がかかり、相続人に手間と労力もかかります(なお、自筆証書遺言の法務局保管制度を利用した場合は家庭裁判所の検認手続きは不要です)。

遺言を活用することで、大切な人を争族から守ることができます。

そして、遺言は公正証書遺言がより確実です。