相続人は誰?超入門!相続人の確定方法

相続って何だろう?

そもそも「相続」って何なのでしょうか?
次のそれぞれの立場からの見方があります。

民法の相続

まず、「民法」でいうところの相続があります。

民法には「誰が」相続人になることができて、「どうやって分けるか」ということが定められています。

相続の専門家は司法書士や弁護士、行政書士です。

この民法の相続は章を改めて詳しく説明させていただきます。

相続税法の相続

次に、「相続税法」でいうところの相続があります。

相続税は、たくさん相続財産をもらった人が国へ払うことになる税金です。

相続税の専門家は税理士です。

税理士ではない人は「個別具体的な」税務相談を行うことはできません(税理士法第52条)。個別具体的な税務相談とは、実際の事例に即して具体的な税金の計算をすることなどです。これは税理士法違反になります。しかし、税理士ではない人も、仮定の事例に置き換えた説明や税法の一般的な解説なら行うことができます。こちらは、税理士法には違反せず、適法です。

誰が相続人になるの?———相続人の特定の仕方

配偶者は生きていれば必ず相続人になる

誰が相続人になるのか?

これは民法で定められています。

まず、大原則として配偶者は生きていれば必ず相続人になります。
「必ず」です。

大原則

配偶者は生きていれば必ず相続人になる

注意点は、「法律上の」配偶者であることが必要な点です。

つまり、婚姻届が正式に出されていることが条件になります。
ですので事実婚、いわゆる内縁関係の場合は相続権が認められないので注意が必要です。

また、離婚した配偶者には相続権はありません。

配偶者以外の相続人には順位がある

配偶者が必ず相続人となることがわかりました。
それでは、配偶者の他に相続人となれる人は誰でしょうか?

これも、民法で定められていて、順番も決まっています。

配偶者以外の相続人の順位

第一順位
直系卑属(子、孫、ひ孫…)

第二順位
直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母…)

第三順位
兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子)

ここまでのことをまとめると、こうなります。

配偶者には順位がなく必ず相続人になります。

配偶者以外には順位があります。

子がいれば、子(=直系卑属:子、孫、ひ孫…)が相続人になります。

子がいなければ、亡くなった人の父母(=直尊卑属:父母、祖父母、曾祖父母…)が相続人になります。

父母がいなければ、亡くなった人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子)が相続人になります。

直系卑属(子、孫、ひ孫…)

直系卑属とは、子、孫、ひ孫…のことです。

代襲相続人とは?

もし、親が死亡して相続が開始したときに子がすでに死亡していれば、子の子つまり孫が相続人となります。

孫が死亡していれば、そのひ孫…と相続権は延々と引き継がれます。

このときの孫やひ孫のように相続人の地位を引き継いで相続人となった人のことを「代襲相続人」とよびます。

養子の扱いはどうなるの?

次に、養子の話です。

養子は法律上「子」として扱われます。
法律上の「子」としての扱いですので、血のつながった実の子と同じように相続人となります。
つまり、相続が開始した場合、実の子と同様に遺産を相続することができます。

ここで注意点があります。

養子と婿養子は違います。
養子とは、養親と養子との間で養子縁組をし、養子縁組届も提出している「法律上の」養子のことです。
それに対し婿養子は、アニメ『サザエさん』のマスオさんのように妻の家に入ってきた旦那さんのことで、法律上の養子ではありません。

養親の相続が開始した場合、養子には相続権があります。

しかし、婿養子には相続権はありません。

配偶者と直系卑属の相続分の割合

配偶者と第一順位の相続人・直系卑属(子、孫、ひ孫…、養子)の相続分の割合は次のとおりです。

  • 配偶者  2分の1
  • 直系卑属 2分の1

例で考えてみましょう。

夫が亡くなり、相続人が妻と子が1人(子Aとします)だとします。

遺された財産が現金3,000万円。

これを 例1 とします。

【例1】
亡くなった人…夫
相続人…妻、子A

【例1-図】
相続人相続分金額できる金額
2分の11,500万円
子A2分の11,500万円

それでは、子が2人以上だった場合は?
その場合は子「全員で」2分の1です。
直系卑属2分の1とは、直系卑属「全員で」2分の1ということです。

それでは、例1をすこし変えてみてみましょう。
子どもBもいたとして、相続人が妻と子が2人(A、B)だとします。
遺された財産が現金3,000万円。

【例2】
亡くなった人…夫
相続人…妻、子A、子B

【例2-図】
相続人相続分相続できる金額
4分の2(=2分の1)1,500万円
子A4分の1750万円
子B4分の1750万円

つまり、子どもたちは全財産の2分の1を頭数で割った分(例の場合、各4分の1)をもらえるということです。

ところで、さきほど養子の話を出しました。

養子は法律上「子」として扱われるとご説明しました。

法律上の「子」としての扱いですので、血のつながった実の子と同じように相続人となります。

例2を少し変えてみます。

夫が亡くなり、妻と子が2人(A、B)いて、さらにそこに養子Cがいたとしましょう。

遺された財産が現金3,000万円。

【例3】
亡くなった人…夫
相続人…妻、子A、子B、養子C

【例3-図】
相続人相続分相続できる金額
6分の3(=2分の1)1,500万円
子A6分の1500万円
子B6分の1500万円
養子C6分の1500万円

ここまでが、配偶者と子(直系卑属)が相続人だった場合です。

それでは、直系卑属(子、孫、ひ孫…)がいない状態で相続が開始したら?

そのときには、相続権が、第一順位の直系卑属から第二順位の直系尊属に移ります。

直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母…)

配偶者と直系卑属の相続分の割合

夫婦の一方が亡くなり相続が開始し、夫婦に子どもがいない場合の相続人は配偶者と直系尊属です。
直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母…のことです。
ちなみに、対象となるのは、亡くなった人にとっての直系尊属です。
夫が亡くなった場合、夫にとっての直系尊属は対象となりますが、存命の妻の直系尊属は対象となりません。

こちらも、相続が開始した時に亡くなった人の父母が亡くなっていればその祖父母へ…というように相続権はどこまでもさかのぼります。

配偶者と第二順位の相続人・直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母…)の相続分の割合は次のとおりです。

  • 配偶者  3分の2
  • 直系尊属 3分の1

例を出して見てみましょう。

夫がなくなり、相続人が妻と亡夫の父D・母Eだとします。

遺された財産が現金3,000万円。

【例4】
亡くなった人…夫
相続人…妻、亡夫の父D、母E

【例4-図】
相続人相続分相続できる金額
6分の4(=3分の2)2,000万円
亡夫の父D6分の1500万円
亡夫の母E6分の1500万円

妻(=配偶者)は必ず相続人となります。
相続財産の3分の2(6分の4/2,000万円)を相続します。

それに対して、亡夫の父母(=直系尊属)は、全財産の3分の1を頭数で割った分を相続します。

例4の場合ですと、父D・母Eは、各6分の1で500万円ずつです。

もしこれが、父Dがすでに亡くなっている場合はどうなるのでしょうか。

例を出します。
亡夫の祖父母、曾祖父母もすでに亡くなっているとします。
存命の直系尊属は母Eだけ。

遺された財産が現金3,000万円。

【例5】
亡くなった人…夫
相続人…妻、亡夫の母E

【例5-図】

この場合は、母Eが相続財産の3分の1である1,000万円を相続します。

相続人相続分相続できる金額
3分の22,000万円
亡夫の母E3分の11,000万円

「亡くなった人の」直系尊属が対象

ちなみに、上記【例4】【例5】の相続権がある父母とは亡くなった「夫の」父母です。

妻Eの側の父母(妻の直系尊属)は、夫の相続とは無関係です。よって、相続人とはなりません。血のつながりがないからです。

つまり、直系尊属とは、「亡くなった人の」直系尊属のことです。


もっとも、例外があります。

夫が生前、妻の父母と養子縁組をしていれば、法律上の親子関係が発生します。
そうなりますと、妻の側の父母も相続人になりますので注意が必要です。


ここまでが、配偶者と直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母…)が相続人だった場合です。

それでは、子ども(直系卑属)がおらず、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母…)もすでに全員亡くなっていて誰もいない状態だったら?

そのときは、配偶者と第三順位・兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子)が相続人になります。

兄弟姉妹

配偶者と兄弟姉妹の相続分の割合

配偶者と第三順位の相続人・兄弟姉妹の相続分の割合は次のとおりです。

  • 配偶者  4分の3
  • 兄弟姉妹 4分の1

例を出して見てみましょう。

夫が亡くなり、相続人が妻と亡夫の兄Cだとします。

遺された財産が現金3,000万円。

【例6】
亡くなった人…夫
相続人…妻、亡夫の兄F

【例6-図】
相続人相続分相続できる金額
4分の32,250万円
亡夫の兄F4分の1750万円

姉Gもいるとしたら?

遺された財産が現金3,000万円であるとして、【例7】です。

【例7】
亡くなった人…夫
相続人…妻、亡夫の兄F、姉G

【例7-図】
相続人相続分相続できる金額
8分の6(=4分の3)2,250万円
亡夫の兄F8分の1375万円
亡夫の姉G8分の1375万円

兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続人となれるのは甥・姪まで!

なお、兄弟姉妹が相続人となる場合特有の注意点があります。

それは代襲相続人となることができるのは兄弟姉妹の子(=甥・姪)までという点です。

第一順位の相続人は子でした。相続開始時に子がすでに亡くなっている場合と、第一順位及び第二順位の相続人がいないものの、相続開始時にすでに兄弟姉妹が亡くなっている場合とを比較して見てみましょう。

相続開始時に、第一順位の相続人である子がすでに亡くなっている場合】
親が死亡して相続が開始したときに子がすでに亡くなっていれば、子の子つまり孫が相続人となります。
孫が死亡していれば、そのひ孫…と相続権は延々と引き継がれます。
このような相続権を引き継いだ人のことを「代襲相続人」といいました。
つまり、相続開始時に子がすでに亡くなっている場合は、延々と代襲相続人が登場することになります。

【第一順位及び第二順位の相続人がなく、相続開始時に兄弟姉妹がすでに死亡している場合】
相続が開始したときにすでに兄弟姉妹が亡くなっているときには、兄弟姉妹の子(=甥・姪)が相続人となります。

しかし、その兄弟姉妹の子(=甥・姪)もすでに死亡していた場合は?
そこで終わりです。
兄弟姉妹の子(=甥・姪)にさらにその子(=又甥・又姪)がいたとしても、相続人とはなりません。

つまり、兄弟姉妹が相続人となる場合に相続権の引継ぎ(代襲相続)が認められるのは、ひとつ下の代まで。
それより下はない、ということです。

配偶者がいない場合は?

これまで配偶者がいる事例でずっと説明してきました。

それでは、配偶者がいない場合はどうなるのでしょう?

結論を言ってしまうと、順番どおりです。

  • 第一順位 直系卑属(子、孫、ひ孫…)
  • 第二順位 直尊卑属(父母、祖父母、曾祖父母…)
  • 第三順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子)

相続分の割合は、同順位内に相続人が複数いる場合は皆、均等です。

例を出して見てみましょう。

すでに夫が亡くなっている状態で今回、妻が亡くなったとします。
夫婦には子どもA・Bの2人がいます。

残された遺産が現金3,000万円。

【例8】
亡くなった人…妻 ※夫はすでに亡くなっている
相続人…子A、子B

【例8-図】
相続人相続分相続できる金額
子A2分の11,500万円
子B2分の11,500万円

相続財産を頭数で均等に分けます。

これは相続人が直系尊属だけ、兄弟姉妹だけのときも同じです。

遺産の分け方はどうやって決まるの?

分け方は3種類。「法定相続分」「遺言」「遺産分割協議」

相続が開始した場合、分け方はどうやって決まるのでしょうか?

それも民法で定められています。

民法での原則は「法定相続分」です。

法律で決められた割合で財産を分ける方法です。

例外は「遺言」「遺産分割協議」です。

「遺言」は、故人が遺族に残す最後のメッセージで、誰が「どれだけ」相続するか決めることができます。

「遺産分割協議」は、相続人全員の話し合いで決める方法です。

現実の相続の現場では、「遺言」「遺産分割協議」が圧倒的に重要です。

事例で考えてみましょう。

たとえば、夫が亡くなり相続人が妻と子一人だとしましょう。

【図】

まずは、法定相続分から。

法定相続分は、法律で定められた相続分の割合です。

事例の場合ですと、民法で、妻と子が相続人の場合はそれぞれが「2分の1を取得する」、というように定められています。本人たちの意志とは関係なく、法律で自動的に決まります。

一方、遺言と遺産分割協議は、法定相続分と異なる割合で相続分を決めることが出来ます。

つまり、自分たちで決めることができます。

遺言で相続分の割合を決めるのは、遺言を書く人です。

事例の場合ですと、夫です。

遺産分割協議で相続分の割合を決めるのは、相続人全員で、です。

事例の場合ですと、妻と子です。

結論:「遺言」が最優先扱い。遺言 > 遺産分割協議 > 法定相続分

先ほど、民法の原則は「法定相続分」で、現実の相続の現場では、「遺言」「遺産分割協議」が圧倒的に重要だと述べました。

どういうことでしょうか?

同じ事例で考えてみましょう。

夫が亡くなり相続人が妻と子一人です。


例えば、夫が遺言を残していたとします。

遺言は最終意思ですので尊重されます。

「私の全財産を妻に相続させる」と書いてあれば、全財産は妻のものです(遺留分侵害額請求権の話はここでは置いておきます)。

妻は、遺言に書かれた内容を実行していけばよいだけになります。

遺産分割協議をする必要はありません。

となれば、法定相続分の話も出てくる余地はありません。


次に、夫が遺言を残すことなく亡くなった場合はどうなるでしょう?

そのときは、相続人である妻と子で遺産分割協議をすることになります。


では、妻と子で遺産分割協議をしたけど、話し合いがまとまらなかった場合は?

そのときは、法定相続分で決めることになります。

具体的には、裁判所関与のもと、遺産分割調停や裁判によって、諸般の事情を考慮しつつ法定相続分をベースに財産を分割していくことになります。


その他法定相続分が出てくる場面としては、遺言がなく、かつ、相続人が一人しかいない場合です。

相続人が一人では「協議」のしようがないからです。


いずれにしても、法定相続分の話が出てくるのは、「遺言」→「遺産分協議」の次でいちばん最後になります。
法定相続分は民法の原則といいつつも実際、出てくるのは一番最後です。

ここまでのことをまとめると、こうなります。

  • 分け方は3種類。「法定相続分」「遺言」「遺産分割協議」がある。
  • 優先度の高い順から「遺言」→「遺産分割協議」→「法定相続分」